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勘弁してくれ痴漢冤罪
更新:2001年3月26日
相次ぐ無罪判決
いわゆる「痴漢冤罪」にからむ無罪判決が相次いでいます.
冤罪事件のほとんどは,被害女性の供述をそのまま鵜呑みにして調書を作り,その供述がいかに不合理なものであったとしても,「被害者の言い分が間違っているはずはない」式の論理により犯人にでっち上げるもののようです.
もちろん,痴漢は犯罪であり,本当の犯人は懲役を含む厳正な処罰を科されるべきです.
しかし冤罪も同様に忌み嫌うべきことでしょう.
一般論として,痴漢事件も「初犯」であれば罰金刑で済まされることが多く,略式起訴により在宅の取調べを受けることになります.これは刑事手続上の話です.
しかし否認事件であれば,「証拠隠滅の恐れあり」等の理由により拘留され,保釈も認められない,といったことがあります.
このため,「認めれば罰金5万円ですぐに出られるが,否認であればしばらく拘留だ」といわれ,たいていの人はそのまま有罪判決を受け入れているのが現状ではないでしょうか.痴漢が親告罪でありきちんと被害を申告する女性が1割しかいないと推定するなら,きちんと無罪を主張して,その結果拘留されるなんていう男性もほとんどいないでしょう.無罪判決が1件あれば,多分冤罪は100件以上あるでしょう.
現実問題として,拘留されれば通常23日間は警察の留置場に収監されるからです.(もちろん違法拘留です.しかし代用監獄はまだまだ残っているようです.それに,拘留の要否は本人が認めているか否かに関係ないはずです.)
捜査のネック
痴漢などという行為は,基本的に物証を残さない犯罪です.窃盗のように指紋や足跡が残るわけでもないし,不正アクセスのように色々な場所にログを残しながら犯すわけでもありません.
従って,現行犯逮捕以外には事実上検挙できないわけです.
ここに一つ,落とし穴があります.
現行犯逮捕は,公務員である警察官(司法警察員)が執行する逮捕と,私人による現行犯逮捕があります.
被害者が「加害男性」の腕をつかみ,身柄を取り押さえ,その後駅員に引き渡した,という一連の行為ですが,これはすでに「腕をつか」んだ時点で私人逮捕が成立しており,その後警察官に引き渡される,という手続になります.従って,現行犯逮捕が成立します.
また,駅などで「加害男性」を指差し,「あの人痴漢です,捕まえてください」といって,誰かが取り押さえたような場合ですが,これも「追跡が継続している」という理由で現行犯の扱いを受けます.
ここがクセモノなのです.
第三者が見ていたというわけでなく,そこには被害者と「加害者」しかいないわけです.加害者が本当に加害者なら一件落着なわけですが,なにしろ後ろ側から犯行に及ぶのが通例の痴漢事件ですから,はっきりいって勘違いだってあるわけです.
しかも,曲がりなりにも現行犯逮捕ですから逮捕状はもちろんいりません.何らの物証なく逮捕され,最長23日間拘留されるわけです.
不届き者の存在
痴漢行為は親告罪であり,被害者の告訴がなければ成立しません.従って,示談が成立すればこれまた一件落着なのですが,ここに付け込む事例も少数ながら存在します.
要するに,テキトーな人を捕まえて痴漢扱いし,警察に引き渡します.現行犯逮捕ですから警察も「明らかな痴漢」として扱います.本人は否認しますが,もちろん拘留されます.
そこで示談を持ちかけ,多額の慰謝料を請求します.やっていなくても,23日間の拘留と数百万円の慰謝料であれば,たいていの人が後者を選ぶでしょう.
このような「恐喝事件」が横行しているのも,これまた事実のようです.この「恐喝」ですが,本人の悪意を立証するのはそう簡単ではありません.
解決の手段
解決の手段は,事件を減らす以外にありません.
現実的な問題として,京王電鉄が「女性専用車」を導入しましたが,これは賞賛に値します.すばらしいことです.
しかし「男性専用車」も走らせていただきたいと思います.これにより,濡れ衣を避ける安心が得られます.
しかし根本的な原因
「埼京線は痴漢が多い」とよく言われます.しかし,「こどもの国線は痴漢が多い」という話は聞いたことがありません.要するに,痴漢が横行する,そして痴漢冤罪が多発する根本的な原因は「混雑」なわけです.
従って,鉄道各社ならびに国土交通省は,痴漢の発生防止も理由のひとつにあげた混雑緩和を進めてほしいと思います.
はっきりいって,田園都市線,小田急線,京王線などは複々線でもまだまだ足りないくらいの人数を運んでいるわけです.10mもないような軌道幅員で,1日に60万人も70万人も運んでいるのです.環七や環八はそれぞれ40mくらいはあるでしょうが,1日に運べる人数なんてせいぜい30万人くらいじゃないでしょうか(6車線×毎時1800台×1.6人×16時間と推計).例えば小田急の新宿口に吐き出される60万だの70万だのという人を,たった2本の線路で運ぼうというのは狭軌の,もとい狂気の沙汰です.
さて,混雑緩和は今の料金では無理だ,という反論が聞こえてきそうです.そのとおりです.大都市の民鉄の運賃は異常なほど安いのですから,混雑緩和なんて無理でしょう.逆に,関東の民鉄の状況なんて,「1人分のきっぷで2人詰め込んでいる」ようなものなわけです.
次の表をご覧ください.とりあえず関東は安い方から小田急,関西は安い方から阪急,高い方で山陽を出しておきます.
km | 小田急 | 阪急 | 山陽 | JR電特 | JR幹線 |
10 | 210 | 220 | 290 | 160 | 190 |
20 | 270 | 270 | 500 | 290 | 320 |
30 | 330 | 310 | 650 | 450 | 480 |
40 | 440 | 360 | 710 | 620 | 650 |
50 | 520 | -- | 740 | 780 | 820 |
阪急が予想外に安く,小田急が予想外に高かったというのが本音ですが,まあ混雑率の高いところは安く,低いところは高いといったところでしょうか.いずれにせよ,車内で痴漢が横行するくらいの混雑というのは「混みすぎ」なのであり,今の料金でそれを是正できないのであれば,今の料金が「不当に安い」わけです.
もし乗車率を100%程度まで落とすために小田急の料金が山陽と同じになったというのであれば,それは単に「適正運賃になった」にすぎず,むしろ小田急は「関西よりも地価も人件費も高いところで,しかもこの時代になってから複々線を作って混雑を緩和した」と評価してしかるべきでしょう.
本題.
小田急や京王も,JRの幹線と同じくらいきちんと取れば,相当な混雑の緩和ができるのではないでしょうか.JRの幹線というのは,それこそ埼京線だの山手線だのから只見線だの左沢線だのまでをプールにした上で,運賃負担を「幹線:地交線=1:1.1」に調整した料金なわけですから,その運賃を京王線や小田急線に当てはめれば,非常に快適な通勤が実現できるわけです.JRの幹線の料金なんて,別にそう高いわけではないはずなのですから,その運賃を適用して混雑緩和を図るというのなら妥当な選択だといえます.
とりあえず通勤線区にグリーン車が欲しいかも
次に現実的な解決手段ですが,まあ前述のような緩和策が実行に移されたとしても,多分30年はかかるでしょう.即効性のあるのは,通勤線区へのグリーン車の投入,すなわち体のいい「値上げ」です.
東海道線・横須賀線は歴史的経緯でグリーン車がつながってますが,通勤線区にグリーン車はどんどん投入されるべきです.ただしあくまでも特急ではありませんから,着席保証まではなしで,ロマンスカーより少し安いくらいが適切なところでしょうか.JRのグリーン(50kmまで750円)は,通勤に使うには高いと思われます.小田急はロマンスカーを一部値下げしましたが,JRは通勤ライナを値上げしているんですから,ずいぶん強気ですよね.
小田急ロマンスカーはいまや通勤電車になってしまい,いつも満席で走っているくらいですから,需要は相当ありそうです.最初は1両か2両連結して,評判がいいようならどんどん増やせばいいし,逆に誰も乗らないようなら減らせばいいでしょう.グリーンの投入で儲かったら,夕ラッシュ以降の増発を期待したいところです.
グリーン定期はかなり高く,近距離で月に2万円程度の出費増になってしまいますが,それでも痴漢冤罪のリスクを考えたらまあ仕方ないと思います.車の保険でさえ月に1万円弱はするのですから.
ただ私の場合は民鉄3社乗り継ぎ(うち1社はラッシュと逆なのでいつも十分座れるから,グリーンが必要といえるのは2社)なので,「1社ごとに2万円増し」じゃ高いので,「単純に定期代を2倍」といった形で済めばそのほうがよさそうです.まあ小田急線や井の頭線に乗るほうが悪いと言われればそれまでなのですが,沿線に住んでいるのだからしかたありません.井の頭線など,朝のラッシュはすさまじく,いつ冤罪の濡れ衣をきせられてもおかしくない繁盛ぶりですから,料金が2倍で混雑が2分の1というのなら,全然そのほうが割に合っている気もします.(京王の料金が2倍になったところで,バスと変わらないんですから.)
いずれの解決策にせよ,心臓に悪いか頭が痛いか懐が痛い話です.